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沖縄戦の終結から78年となる「慰霊の日」を迎えた。最後の激戦地となった糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園では6月23日、県主催の沖縄全戦没者追悼式が営まれた。
激しい地上戦で日米合わせて20万人以上が犠牲になった。県民は4人に1人が亡くなった。日本軍将兵は死力を尽くし、九州などから2500機以上の特攻機が出撃した。
その犠牲の上に今の平和がある。全ての戦没者に哀悼の誠を捧げるとともに、沖縄を二度と戦場にしない決意を新たにしたい。
追悼式に出席した岸田文雄首相はあいさつで、戦没者を追悼し、日本を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しいとして、「世界の誰もが平和で心豊かに暮らせる世の中を実現するため、不断の努力を重ねる」と誓った。
沖縄の在日米軍基地をめぐっては「基地負担の軽減に全力で取り組む」と語った。
玉城デニー知事は平和宣言で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設断念などを「求め続ける」と述べた。
防衛をめぐっては、南西諸島を含む日本の防衛強化に向け、政府が昨年12月に閣議決定した安保関連3文書について「県民の間に大きな不安を生じさせている」と批判した。
県民を守るべき立場にある玉城氏が、これら2つの考え違いを追悼式で披露したのは残念だ。
普天間飛行場は市街地に囲まれている。周辺で暮らす県民の命を守るため移設は急務だ。玉城氏や県の辺野古移設反対が危険性除去を妨げている。
安保3文書は防衛力の抜本的強化を図る内容だ。沖縄を含む日本を攻撃しようとする国が現れる場合への備えである。それを不安の原因と難じるのはおかしい。
警戒すべきは、たとえば中国の動きである。4日付の人民日報は、習近平国家主席が沖縄の島である尖閣諸島(石垣市)に関連し、「琉球」と中国の交流の深さに言及したと報じた。
中国に狙われているのは沖縄そのものではないかという警戒感を持つ必要がある。台湾有事が沖縄へ戦火をもたらす恐れもある。
玉城氏は中国や北朝鮮の脅威を直視し、政府や自衛隊と協力して県民を守り抜く態勢を整えてほしい。それこそが、平和を守る抑止力を構成するのである。
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2023年6月24日付産経新聞【主張】を転載しています